「夏祭り」は夏の季語?他の季節にも祭りはあるのに季語がない理由は?
夏が近づくと、「何となく祭りの季節だな?」って思いますよね。
というのも夏は花火大会や各地で祭りが開催される時期だからです。
そして実際に「祭り」というのは夏の季語らしいのですが、なぜか春は「春祭り」、秋は「秋祭り」と記載します。
その違いは何なのでしょうか?
夏祭りは季語?春祭りや秋祭りは?
まず、「夏祭り」は夏の季語として俳句などに使われています。
確かに夏は各地でさまざまな夏祭りが行われますからね。
しかし、1年を通してお祭りは夏だけかというと、そうではありませんよね?
地域によっては春祭りや秋祭りが開催されるところも多くあります。
しかし、「祭り」自体が夏の季語であって、他の季節の季語に「祭り」を使う場合は「春祭り」、「秋祭り」として使うそうなんです。
なぜなのでしょうか?
夏祭りが季語になったのは京都の祭りが由来?
実は「夏祭り」が季語となったのは京都のお祭りが関係しているようです。
京都は日本の古都として国内外から観光客が多い人気スポットですよね。
その人気の理由の一つは昔ながらの風景や色々な神社仏閣などがあるからです。
そしてそんな神社やお寺ではそれぞれ色々なお祭りが開催されますが、中でも有名なのが賀茂神社で行われる葵祭(賀茂祭)と八坂神社で行われる祇園祭です。
葵祭が行われる賀茂神社は伊勢神宮に続いて格式の高い神社とされており、平安時代の祭りというと、この葵祭を指していました。
1500年前から続く歴史ある祭りで、8キロもの距離を平安時代の装束を纏った人々が練り歩く「路頭の儀」は華やかで、当時にタイムスリップしたような気分にさえなれます。
開催日は5月15日で、初夏のイベントとされています。
そして八坂神社の祇園祭といえば日本三大祭りの一つとされるほど有名な夏祭りです。
7月1日の吉府入りから10日の鉾建て、神輿洗い、16日の宵山、屏風祭、17日の山鉾巡行、24日の後の祭、花傘巡行、31日の夏越祭まで1ヶ月の間、続くお祭りです。
中でも山鉾という山車に提灯をつけて夜の大通りをねり歩く様子は華やかで、いかにも日本のお祭りといった雰囲気があります。
そしてこの盛大な夏祭りが全国の祇園社や天王社に普及することで、夏祭りが全国に定着し、夏祭り自体も夏の季語になっていったようです。
さらに東京では江戸時代から日枝神社の山王祭、神田明神の神田祭、浅草神社の三社祭が夏祭りとして有名です。
個人的にもお祭りと聞くと何となく「夏」のイメージを持つので、やはり夏の季語としてぴったりなのでしょう。
夏祭りは春や秋の祭りと意味合いが違う?
では、お祭りは夏祭りだけでなく、春や秋にも開催されるところもありますよね?
しかし、調べてみると「祭り」自体が夏の季語であって、春や秋のお祭りは季語として使う際に「春祭り」や「秋祭り」と、わざわざ季節を入れます。
なぜ春や秋のお祭りは夏祭りのように、ただの「祭り」という季語で使わないのでしょう?
それにはそれぞれのお祭りの意味合いが強く関係しているようです。
まず、夏祭りの由来とも言える葵祭りがなぜ始まったのかというと、祟りを鎮めるためです。
かつて暴風雨がひどい時期があり、占いでその原因は賀茂神の祟りであるとされました。
そしてその祟りを鎮めるため、祭礼を行ったとされています。
また、祇園祭も始まりは疫病の大流行を鎮めるための御霊会だったそうです。
疫病で突然亡くなった人々の魂が成仏できずに彷徨い、悪霊になってしまったそうです。
そんな魂は御霊会によって鎮めることができました。
このように、夏祭りの代表格とも言える葵祭と祇園祭は元々、祟りや怨霊を鎮めるための禊や祓いを目的としたお祭りでした。
それに比べ、春祭りや秋祭りというと、五穀豊穣、自然の恵みに感謝する意味合いがありました。
ちなみに「冬祭り」という季語はありません。
元々、冬に開催されるお祭りも少ないですからね。
夏祭りを季語として使った有名な俳句紹介!
では、実際に夏祭りを季語として使った俳句にはどんなものがあるのかご紹介します。
・綿菓子も 紅もて装ふ 夏祭り 相馬遷子
「綿菓子も紅をつけて、いよいよ夏祭りですね」という意味合いです。
夏祭りというと、紅白幕や提灯など赤い色合いのものが多くなります。
そんな夏祭りには赤い綿菓子もあり、いかにもお祭り感が溢れています。
季語である夏祭りの雰囲気がよく伝わっていきますよね。
・娘らも 勢子の鉢巻き 夏祭 森澄雄
「夏祭り、娘たちも勢子の鉢巻をしていますね」という意味です。
夏祭りといえば、神輿や山車を引くのが有名ですが、その神輿や山車を引く人たちを勢子と言います。
つまり娘たちも夏祭りで山車や神輿をひく姿をしている様子を表しています。
・夏祭 髪を洗つて 待ちにけり 杉田久女
「夏祭りなので、髪を結ってもらうために洗って待っています」という句です。
夏祭りに出かけるためにわざわざ髪を洗って、結ってもらうのを待っているなんて、女性らしい可愛らしい気持ちを表した詩ですよね。
季語が後ろにつくか、前につくかでもかなり印象が違いますね。
後ろについていると季語である夏祭りの様子を前の句で表しており、季語が前についていると後ろの句で夏祭りに対する気持ちが表れているように感じます。
「夏祭り」は夏の季語?まとめ
このように「夏祭り」や「祭り」は夏の季語です。
今年の夏はコロナの影響もあり、各地でお祭りが開催されるかまだわかりませんが、いつも通りの華やかなお祭りを迎えられたらいいなと思います。
元々、夏祭りの由来は禊や祓いから来ているので、コロナ退散の祈りを込めて開催できることを祈っています。